ネクタイ 8

 某デパートで販売していたエルメスのネクタイが、じつは偽物だったと判明して、物議をかもしたことがあった。
「偽物かもしれないけれど、偽物だってわかる前はみんな本物だとおもっていたわけだし、発覚しなければ本物だったんだよね」
 砂糖部長が胸のネクタイをいじりながら、めずらしく弱気な口調でいった。
 部長の誕生日に、夫人がプレゼントしてくれたネクタイは、某デパートのエルメスだった。