大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P172

 朝顔の裂けて大きく見ゆるかな


 高校生の私は、宿題に困り果て母に教えてもらった松尾芭蕉の〈あさがほに我は飯くふ男かな〉という句を真似て〈朝顔に我は猫飼ふ女かな〉というのを作って提出した。
 俳聖芭蕉の句を盗作? した罰があたったのか、俳句歴四十年にして朝顔の駄作しか作れない。揚句は、紅紫の朝顔に切れ目が入ってだらりと二つに離れたさまを「裂けて大きく」と詠んだ。裂けた朝顔は、風に揺れるたびに美しい南国の鳥のようだった。 (『星涼』)