大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P116

落ちてくる水の力や百合の花


 瀧が好きで〈秋深きものにはるかな瀧ひとつ〉〈瀧音に肩をそがれてゐるごとし〉〈凍瀧や千年も待つここちして〉〈黙契は凍てたる瀧にこそすべし〉〈凍瀧や禽ちらばつて散らばつて〉など袋田の瀧で作ってきた。
 あるとき、瀧の飛沫を浴びて凛と立つ山百合を見て、瀧の力強さを受けとめられるのは百合の花しかないと断定した。その情景を今までとは角度を変えて詠んだのがこの句。無駄を省いて単純化を試みた。 (『火球』)