大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P114

 嘴のかたさの箸や年の酒


 我が家の正月はいつも〈おめでたうと言うても二人睨鯛(にらみだい)〉という感じである。毎年、元旦は日本酒で乾杯し、太くて長い箸で鷺や鴫が餌を啄んでいるみたいにおせち料理をいただく。太箸が嘴の固さだと気付くのものんびりと寛げる正月だからだ。
 結婚当初は、すぐ離婚すると言われながら長いことやってこられたのは、互いに嘴を挟まずにやってきたからか。いや「僕が我慢したから」と夫は言うだろう。 (『火球』)