大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P108

 水銀の流るるごとし川の蛇


 近くの川辺を歩いていると、夕映えの川面をきらきらと流れてくるものがあった。よく子猫が捨てられているので、子猫の死骸? と目を凝らしてみると一匹、いや二匹の蛇だった。驚く私を後目に蛇たちはしなやかに泳いで行く。水銀が流れて行くように、美しく妖しく……。そして、泳ぎ終えると洲の草の上で優しく絡みあった。夕べから夜へと変わる微妙な時間の中で、蛇たちが見せた一瞬のドラマ。 (『火球』)