大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P106

 ゆき合へる蟻の突立つ牡丹かな


 いつものように散策していると、森の中に屋敷があり、広い庭いっぱいに紅、白、黄の美麗な牡丹が今を盛りと咲き誇っていた。ふと足元を見ると蟻たちがせわしなく往来している。すると、出合い頭に二匹の蟻がまっすぐに立った。まるで立ち話をしているように……。百花の王と言われる牡丹と働き蟻の取り合わせが面白くて詠んだ。現在、牡丹の咲いていた庭は駐車場になっている。
 牡丹は幻の花になってしまった。 (『火球』)