大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P104

青空の雨をこぼせり葛の花


 夏から秋にかけて我が家の庭は葛に覆われ隣家も見えない。毎年、その時期になると待ちに待った香の客(まろうど)がいらっしゃる。客の正体は葛の花。その芳香に心癒され創作意欲も湧いてくる。甘美な香に猫たちもうっとり。だが、晩秋になると香の客は風とともに去ってしまうのだ。
 葛の花がもっとも香気を放つのは、青空がひっそりと雨を零すときだって皆さん御存知でしたか?  (『火球』)