大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P102

 凌霄に猫のあかるき肛門よ


 晩夏になると庭のフェンスに巻き付くように凌霄が黄紅色の大きな花を次々に咲かせる。まるで約束したように咲く実直な花だ。
 この句、石田勝彦先生は「猫ではなく象にしなさい」とおっしゃった。添削の名手の先生のご指導ではあるが否。尾を立てて歩くときの猫の肛門のかわいらしさ、明るさを詠みたかったのだ。俳句的には象がベストでも私的(わたしてき)にはねこ(註1)である。明るい凌霄の花と猫はどこか通じるところがあるから……。 (『雲の塔』)


註1:この「ねこ」は、絵文字の猫にふりがなで「ねこ」。