大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P122

 火に投げし鶏頭根ごと立ちあがる


 鶏頭の個性的な立ち姿は、猛々しいが万葉集では「韓藍(からあい)」と詠われ若い女性に喩えられている。
 そんな、不思議な赤紅色の鷄冠(かんむり)形の花の美しさと力強さを詠むために、枯れた何本かを燃やしてみたことがあった。火がくまなくゆきわたるとパチパチ爆ぜる音をさせながら炎の鶏頭は根ごと立ちあがった。その迫力のすごかったこと。まるで咲いていた季節へ還っていくように……。 (『火球』)