号外 たのしい編集-2

「たのしい編集」のカヴァーの、表2に折り込んだところに、まえがきのまえがきのような文章が掲げてある。


 本を読んだり、書いたり、つくったりするのは、とてもたのしい。たのしいけれど、けっこう大変な作業でもある。35年にわたって、僕は本を編集してきたが、いまでも、試行錯誤の連続だ。あたらしい原稿をまえにして、どんな本に仕上げたいのか、いつもゼロから出発する。だから、本のつくりかたについて、ちょっとしたアイデアやヒントをメモしておこうと思った。それが本書だ。


 この本は、どうやら自費出版に毛が生えた程度の、ごくわずかばかり刷られた本らしい。大手の書店の出版関係の棚に、ようやく一冊並ぶかどうかといった按配の本のようである。尼ヶ崎さんの口ぶりには、ようやく残部僅少といえるところまで漕ぎ着けた、といった雰囲気が漂っている。


「印税、入るんですか?」
 身も蓋もない質問をしてみる。
「いやいや」
 尼ヶ崎さんは、相変わらずだなあ、といった表情をした。
「相談にのっているうちに、わたしも登場することになって。インタビュー形式で編集作業について説明しているんですよ。専門ですからね」
 この本に収録されるにあたっては、会社の上司を通じてきちんと会社の了解を得たのだそうである。


「出版社はどこ?」
英治出版。こないだ友だちに会ったとき、その話をしたんですよ」
「自慢で」
「そう。でもないけど、まあ話で。そうしたらiPhoneとりだして、さっそく検索してみたようで、Amazonにあったって。なんだ買ったのかってきいたら、うん、申し込んだって。もう残り少なかったようですが」
「いいお友だちですね」
「まあ。その友だちの友だちも、これがじつにいいやつなんだな」
 遠まわしに自分のこといってるのか。
(つづく)