銀座百点 号外24
花岡万作さんは、句会のお仲間の一人である。南青山に「ゑり華」という加賀友禅の呉服店があるが、万作さんはそこの社長さんである。
万作さんのご実家は金沢にある。ご実家が「ゑり華」本店で、万作さんは子どもの頃から、他人の顔を見たら、お客か否かにかかわらず、まず「こんにちは」「毎度ありがとうございます」と口にする商家の習わしになじんで育ったにちがいない。彼の笑顔と物腰のやわらかさが、なにもいわなくともそれを物語っている。
白石いて丁さんとは、奇しくも同じ大学の(十年のひらきはあるものの)先輩後輩の間柄で、しかし句会の招集に応じて顔を合わせなければ、この先ずっと知らずにすれ違っていたはずである。
顔見知りになってから、それぞれが知人と神楽坂の昔なじみの行きつけの店に飲みにはいったところ、偶然そこでぶつかって、おたがい連れをそっちのけで飲んで昔話に花を咲かせたといういわくがある。店の名前を「まんげつ」という。
ぼくは、その話をきいたとき、すぐに辻征夫の句をおもいだした。それは、こういう句である。
満月や大人になってもついてくる 貨物船