銀座百点 号外16

 先日、句会がひらかれたとき、白石正人さんは、「銀座百点」の「銀座句会」で秀逸をいただいたお祝いだといって上梓されたばかりの大木あまり先生の最新句集「星涼」をお仲間に配られた。星涼とは、集中の句「星涼しもの書くときも病むときも」によるものだろう。
 さっそく、大木先生にご署名をねだった。「ちゃんとした書くもの(ボールペンとかサインペンではなく)がほしい」とおっしゃるので、亭主わさびさんのご主人鶴吉さんが、モンブランの太軸を出してこられた。斯界の風雲児、玄雲堂氏の遺品の由。
「書きやすい」。大木先生言下にのたまう。「でもさ、いて丁(白石さんの俳号)、わたしもきょう、みんなに買ってもらおうとおもって、重い本をえっちらおっちら抱えてきたのに、あなた、営業妨害よ」
 大木先生のご署名には、猫の絵が添えられていた(というか、猫の絵にこちらの名前と先生のサインが添えられていた、といったほうが正解)。
 

 大木あまり先生の第五句集「星涼」は、ふらんす堂俳句叢書の一巻である。白とグレイの瀟洒な装丁で、表紙に大天使が描かれている(装丁:山岡有以子)。税込み2667円。
 

 むかし、田村隆一先生に、「詩集は高すぎます」といったことがある。
 二日酔いでベッドに長々とノビていた詩人は、そっと片目をあけると、「きみ、水道の蛇口をひねるようなわけにはいかないよ。詩の一行が生まれるまでには、時間がかかるんだ」といった。「それが一冊の本にまとまるまでの時間を考えてみたまえ。けっして高くはないだろう。おまけに、詩では食えないときている」


 この句集には、三七七句が収録されている。だから、一句あたり7円である。いまどき、7円で感動できることなんかまずないから、ずいぶんとお買い得だとおもう。
 なぜそんなにすすめるのか、ときかれたら、ぼくは即座に答えるだろう。「これこそ、ぼくが俳句だとおもう俳句らしい俳句だから」。