銀座百点 号外19

 白石いて丁さんが、大木あまり先生の句集「星涼」から猫の句だけ二十一句取り出して、プリントにして配ってくれた。また、叱られることにもなりかねないが、せっかくだから引用しよう(「飛行船よ、そんなにほいほいみせちゃったら、句集買ってもらえなくなるじゃないの」)。


    鼻に皺ある恋猫となりにけり     春
    猫に鈴われにおぼろの紐一本     春
    夜の川光ってゐたり猫柳       春
    父母のうしろに猫や瓜の馬      夏
    減りもせず月にゆれをる猫じやらし  秋
    愛猫は火薬の匂ひして月夜      秋
    伝言は凍蝶のこと猫のこと      冬
    青き眼涼しふつつかな猫ですが    夏
    猫の子のふにやふにやしてよく走る  春
    冷麦や猫が八つ手の葉陰より     夏
    戦なき国や涼しき猫の髭       夏
    猫洗いつつ夕焼をおしみけり     夏
    猫探す夜の滴りのあきらかに     夏
    猫の尾のちよこんとついて厄日かな  秋
    猫拾ふ春の隣といふ頃に       冬
    恋猫に鐘なつてゐる築地かな     春
    青丹よし奈良に垂れ目の子猫かな   春
    竹林に恋猫として埋めにけり     春
    喪の家にクロネコヤマト来て西日   夏
    逝く猫に小さきハンカチ持たせやる  夏
    退院やゆふやけに逢ふ猫に逢ふ    夏


 写していて、すこしも疲れない。これは、ぼくにとって希有なことだ。しかも、いつの間にか、あの「耳をすませば」の主人公の女の子のことをおもい浮かべていた(あまり先生、ゴメンナサイ)。
 白石いて丁さんは、柄に似合わずしゃれた人で、つぎの一句をつけくわえてあった。


    助手席の犬が舌出す文化の日     秋