銀座百点 号外18

  大木あまり句集「星涼」(ふらんす堂刊)の帯には、自選十五句が掲載されている。帯に載せてあるくらいだから、引用しても叱られないだろう。
 なんだか、いつも叱られているような気がする。だから、というわけでもないが、先日の句会につぎのような句を出した。


    寒燈下大木あまりに叱られる  飛行船


 では、あまり先生の自選十五句。


    頬杖や土のなかより春はくる
    鳥籠に青き菜をたし春の風邪
    田中裕明紛れをらむか雛市に
    たんぽぽや鈍器のやうな波が来る
    蝶よりもしづかに針を使ひをり
    身をよぢる月の柱の守宮かな
    願はくは滴りこそを死水に
    握りつぶすならその蝉殻を下さい
    かりそめの踊いつしかひたむきに
    草原に舟をつなぎて世阿弥の忌
    象の背を箒で掃いて終戦
    きちきちと鳴いて心に入りくる
    胃が一つある楽しさや関東炊
    逝く猫に小さきハンカチ持たせやる
    星涼しもの書くときも病むときも