銀座百点 号外22

 俳人池田澄子に、わさびさんがとても惹かれている句がある。


    じゃんけんで負けて蛍に生まれたの


 ふらんす堂に「自句自解」シリーズというのがあって、その第一回配本が池田澄子の「ベスト100」である。
 この句の自解を、ちょっとのぞいてみる。


 じゃんけんは単純に分別する折の手段だから勝ち負けに意味はない。何処に、何時、何になって生まれてくるかは、このようにひょっとした偶発的な成り行きなのだろうけれど、その偶然の結果は、遁れようのない運命を押し付けることが多い。人に生まれようが鯨に生まれようが蛍であろうが、その儚さは同じだろう。


 池田澄子の略歴をみると、「三橋敏雄に私淑のち師事。」とある。傾倒していた俳人に、じっさいに教えを受けることになるなんて、じつにしあわせなことである。これも偶然の産物なのだろうか。


 これらの口語の句を作り始めた時、コレは俳句じゃないと総スカンを受けそうで少し怖かった。ところが「コレがオスミ調」と三橋敏雄先生は強く背を押した。
                              (『空の庭』)