綴じ込みページ 猫-26

 うちのミーヤにも、「猫の十戒」にあげられる項目のいくつかはあてはまりそうですが、ぼくはミーヤに、あれもだめ、これもだめとはいいません。しかし、仏壇にのぼったり、キッチン台の火のそばを通ったり、うんと高いところからダイレクトに飛び降りたりしたときは、だめ、とか、危ない、とか、ちょっと大きめの声を出します。ミーヤは、なんとなくしらけた顔で無関心を装いますが、しばらくすると足もとにきて、からだをスリスリして甘えます。きっと、ごめんね、といっているのでしょう。
 では、「ミーヤの十戒」です。


1.あけちゃんの写真立てを倒さないこと。
(ミーヤはあけちゃんの写真立てが好きで、いつもあごをかいたり、頭をスリスリするけれど、倒しちゃダメだな。ミーヤがスリスリするのは、きっとあけちゃんもよろこんでるとおもう)。
2.爪を切らせないなら、パパの足に前足をかけないで。
(ミーヤは、爪切りがきらいなんだよね。だから、ハサミを見せただけで、伸ばしていた前足の手首をひっこめちゃうんだろ。だったら、パパが椅子に腰かけてるときに、後ろ足で立ちあがって、パパの足に前足の爪を立てるの、やめてくれる。飛びあがるくらい痛いんだから)。
3.ゲボするとき、布団の上は避けよう。
(ミーヤは、どうして、きまって布団の上にゲボするのかなあ。座布団はまだいいよ、カヴァーを洗えるから。掛け布団もいいよ、カヴァーを洗えるから。選りにもよって、ガーゼカヴァーの絹の夏掛けにゲボする気持がわからない。なかまでしみ込んでるのを見たときの、パパの気持を考えたことがありますか。あれは、あけちゃんが中国旅行へ行ったときに買ってきたものなんだ。クリーニングのきかないものなんだ。もう1枚残っているけど、もう使わないね。パパの宝物のひとつだから)。
4.キッチンで火を使っているとき、キッチン台へはあがらないこと。
(パパは、ミーヤに、だめ、ということがないから、流しでパパが洗い物をしているとき、キッチン台にあがってきて、平気でパパの手の下を通り抜けていったりするけど、やかんをわかしてるときだってあるのだから、火には気をつけてね。きれいな毛皮に焼けこげができたら、パパ泣いちゃうよ)。
5.テーブルにのってもいいけれど、テーブルにのってるものを落とさないで。
(ミーヤは、なにか見ると、かならず前足でつついてみるよね。つついてもいいけど、テーブルから落とさないでくれる。腕時計や万年筆って、修理代がバカにならないんだぜ。それから、そーめんのつけ汁にチューブの生わさびをしぼっておいたら、手でつかもうとしたよね。そのまえに、トイレを使って、しきりに手でかきまぜてただろ。気づかなかったら、パパ、食べるところだったんだから)。
6.どこにあがってもかまわないけど、お仏壇はいけません。
(お仏壇には、あけちゃんと、あけちゃんのお父さんお母さんが入っているんだ。パパの上にのっかってもいいけど、お仏壇は遠慮しなさい。それと、お仏壇を掃除しているとき、ご本尊様や三人の位牌や、なんだかんだ取り出して空になっているからといって、ちゃっかりなかに入り込んではいけないね。)
7.高い所から飛び降りるのはなしよ。
(冷蔵庫と食器棚が同じくらいの高さで、部屋のなかでは高い部類だ。冷蔵庫へはキッチン台から、食器棚へは、カウンターの上の電子レンジを踏み台にしてカーテンレールにのぼり、(のぼってからいったんどうしようかなという表情をして)それからカーテンレールをつたって食器棚の上にたどり着くのだけれど、遊んだあと、冷蔵庫から直接床に飛び降りるのと、食器棚から直接飛び降りるのだけは勘弁して。ミーヤのきゃしゃな足が、とても着地に耐えられるとはおもえない。いつもドキッとするんだから)。


十戒」なのに七つで終わってはいけないな。けれど、まだ、この先、何年かいっしょに暮らせそうだから、おいおい付け足していこう。わかってるかな、いつもいってるけど、パパはミーヤが大好きだよ。とっても大事だよ。パパの宝物だ。だから、パパを悲しませないでね。これが「十戒」の八つめ。