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「Free & Easy」という雑誌がある(略して、FE)。手もとの2007年2月号は、創刊100号記念号で、特集が「マックィーンから教わった」。スティーヴ・マックィーンのファッションから生き方、そして真実にまで迫っている。まあ、ぼくは、真実なんてどうでもいいのだけれど、いや、むしろ真実なんてものには関心がないのだが、書かれているのだから仕方がない。内田百間先生ではないが、仕方がないものは仕様がない。
 ラルフ・ローレンの言葉が載っている。
スティーヴ・マックィーンのスタイルは、普段の生活や経験によって得た彼の真実に基づいている」。
 さっそく、真実が顔を出した。「FE」は、こう続けている。
「マックィーンの服装術が最も個性的に映った最初の作品といえば『大脱走』だ。彼は、A-2フライトジャケットを、ファスナーが閉まらないほど小さめに着て、腕から裾(註:袖の誤植)がはみ出ないようスエットシャツを七分丈にぶった切った。上半身は『裾は出ないが腹も見えない』ギリギリの長さに調節し、下半身に穿くチノーズマッカーサー元帥のようなハイウエストではなく、IVYリーガーのようなミッドウエストで細身にカスタムした。
 例えば、我々が学生服をカスタムして個性を出そうとしたように、アメリカの軍隊でもトラザーズの折り目をピシッと入れたり、キャップの形を崩したり、ペイントしたりしてカスタムを楽しむ風潮があった。マックィーンのミリタリールックは、海兵隊時代に身につけたものだ。『戦う翼』で着たB-3は実際に第二次世界大戦で着られたウェアだったが、ここでも彼は1サイズ小さめを着て体型をスマートに見せている。A-2の着くずし方もそういった経験がなければ発想できなかったはずだ」(「ジャストサイズのミリタリールック」)。
 なんだかわからないけれど、「アンアン」がすすめていたから小さめのA-2ジャケットを着たぼくは、いったい、どうやって真実と向き合ったらよいのだろう。
(つづく)