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 スティーヴ・マックィーンの最初の妻、ニール・アダムスは語る。


FE:ファッションは?
N「天性のもの! 何を選ばせてもすばらしかった。ジーンズ一つとっても100本以上あったけれど、どれもジャストサイズに作られていたわ。真新しいものを穿いたスティーヴなんて見覚えある? 彼のジーンズは当時からすべてサンドウォッシュしてあったの。もちろん彼がリクエストして、スタジオ側が全部用意していたんだけど。仕上がりが気に入らなかったときは、よく突き返していた。どのトラザースもちゃんとプレスしてあり、バタグリア(NYの有名紳士服店)の服やブリオーニのスーツもよく似合っていたわ。とにかくシック。タキシードを着てもデニムを着ても趣味がよかった。何が自分に合うかをよくわかっていたの。今でもみな彼のようなスタイルで服を着こなすでしょ。それだけ完成していたということでしょうね」
FE:彼のサインが入ったアパレルまでありますよね。
N「あれ、実は私のサインなの。ここだけの話だけれど若い頃から写真のサインはすべて私がやっていたのよ」
FE:彼には永遠の少年のイメージがあります。
N「たしかに少年だった。周囲の世界を子どもの目で見ていたの。とても純粋な人だったから、自分の子供の気持ちもよく理解できていたわ。暇さえあればバイクに乗せて、よく遊んでいた。まるで子供のように、恋人にも子供にもバイクを教え込むの。私は、バイクはだめだけれど」
FE:逆にダークサイドは?
N「たしかにダークサイド(影)はあった。彼の母親は大勢の人と結婚しているの。女性を求めるのは、その影響がきっとあるのね…。道を外れた彼はボーイズリパブリックに入り、人に対する振る舞い方を教えこまれた。でも、彼にとっては過酷だったと思う。たくさんのルールの中で生きなくてはいけなかったのですからね」
FE:生まれ変わっても彼と結婚しますか?
N「離婚しても彼は最後まで友人だった。でも、生まれ変わっても結婚はしないわ」
(つづく)