綴じ込みページ 猫-227

 アカデミー賞文学賞に、今年も村上春樹は選ばれなかった。残念というか、ご愁傷さま。


 だいたい、村上さんが候補にノミネートされていたのかどうかもわからないらしい。わかるのは50年後、アカデミーが正式に公開してからのことだそうだ。三島由紀夫も、当時、最終選考まで残らずに(ノミネートの段階で)消えていたことが、50年たって、アカデミーの発表ではじめて明らかになった。


 ぼくがきちんと読んだ作品は、衝撃を受けた第一作「風の歌を聴け」(1979年)、二作目の「1973年のピンボール」(1980)、そして三作目「羊をめぐる冒険」(1982年)のたった三作だ。つぎの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(1985年)は、長すぎて読む気になれなかった。


 短編集は、「中国行きのスロウ・ボート」(1983年)、「カンガルー日和」(1983年)、「蛍・納屋を焼く・その他の短編」(1984年)までは夢中で読んだ。短いものは読みやすいから、その後も短編集やエッセイ集にはよく眼をとおした。


 律儀に彼の本が上梓されるたびに買い求めたから、2001年まではすべて初版で揃っている(小説でいえば「スプートニクの恋人」まで)。それ以降は、億劫になって買うのをやめた(カミサンが「アフターダーク」を買って読んだが、これはぼくの本ではない)。


 ぼくが村上春樹を評価するとしたら、やはり「羊をめぐる冒険」までかな。それ以降の彼の作品は、わるいけど通俗小説だとおもう。通俗小説は、アカデミー文学賞には向かないのだそうで、(猫好きの仲間としても)たいへん残念である。