号外 たのしい編集-6

「たのしい編集」の「第二章 DTP」、尼ヶ崎和彦さんのinterview「熱いぞ、これは」から。


「色地獄から抜け出すには」
和田 色の話をはじめると、底なし沼ですね。そもそもデジタルで入稿してポジみたいな色がだせるのかって。
尼ヶ崎 それは不可能です。
和田 自分のモニタとデザイナーのモニタと印刷所のモニタの色が、そもそも合ってないし……。
尼ヶ崎 完璧には合わない。うちの会社では、毎朝、仕事を始める前に、製版のモニタの調整をやっているんですよ。もちろん、社内の基準に合わせながらですが。
和田 えらい大変ですね。
尼ヶ崎 新しいものが出たりすると、またそれに合わせてやらなきゃならない。とてもめんどくさいですよ。アナログのときは、なかったわけですから。ポジは、いつ、どこででもポジです(笑)。
和田 たしかに、ポジはそれだけで、画像データと最終見本を兼ねそなえてますからね。
尼ヶ崎 それにオフセット校正機のメーカーが色校正機の製造をやめてしまったので、近いうちに校正刷りはすべてDDCPに移行するでしょう。


註)DDCP:ダイレクト・デジタル・カラー・プルーフィング。
校正専用機を使用せず、本紙ではなく専用紙に直接出力するカラー出力システム。


和田 最近では、予算の関係もあって、DDCPで色校することが多くなりましたね。本機で何十万円もかけて色校を出しても、本刷りでまったく同じような結果がでるのか悩むところですね。DDCPでもきれいに仕上がる場合もあるでしょうし。それに、工場で立ち会いをすればわかりますが、刷っていくうちに、微妙に色が違ってきて、どこでおさまるんだろうって。
尼ヶ崎 インキの量を調整して刷りはじめたところで、すぐには色が出ないんですよ。何枚か刷っていくうちに、本来の色が出てくる。もちろんその検証はしていますが、色が安定してくるところ、要するに我々は〈OKシート〉って言うんですが、製品レベルに達したかどうか判断して、それで刷られたものをはねるわけですよ。いわゆる「ヤレ」ですね。いずれにせよ、DDCPの色校はシュミレーションにすぎない。
和田 でもね、さっきのデジタルの話と同じで、ほんとうの色なんてないんじゃないかと。
尼ヶ崎 個人的には、最近私は、校正って何が正しいの? と思っている節はあります。
和田 ショックだったのが、本機で色校の見積もりをとったら数十万円。モノクロの本が一冊刷れる。それをDDCPにしたら数万円。ならそっちでいいやと。なぜかといったら、本機で色校正して、本番でまったく同じ色が出るかといったら……。
尼ヶ崎 保証がない。
(中略)
和田 DDCPで色校をとった場合、編集者が確認すべきポイントは何でしょう?
尼ヶ崎 少々乱暴な言い方かもしれないですが、色校は見た瞬間の印象です。本機だろうがDDCPだろうが、本人が違うと思えば違うんですよ。当然のことながら、DDCPと本機はモノが違うから、まだ段差があります。その差を縮めようと一所懸命に努力してますが。
(つづく)