綴じ込みページ 猫-238
書類審査が通って、ぼくのところに猫が来ることになった。ぼくは、猫を飼ったことがなかったから、うまくやっていけるかどうか、ずいぶん心配だった。
猫を届けてくれたボランティアの母娘は、半日おしゃべりして、夕方帰っていった。帰りがけに、一週間いっしょに暮らしてみて、もし相性がわるければまた引き取りに来ます、といった。
猫は、うちに着いたとき、娘さんがキャリーバッグから出して、ぼくが用意しておいた猫のケージに移したので、母娘がいるあいだ、じっとケージの簀子の床にうずくまっていた(註:ケージの寸法は、たて・よこ・高さが90×60×130cm)。
ぼくは、ケージの扉をそっと開けた。気づいた猫は、ちょっとあくびをすると、自分の肩のあたりをなめてから、おもむろに外に出てきた。そして、さっと冷蔵庫と壁のあいだの隙間に潜りこんだ。覗いてみると、ちょこんとすわって、うなだれてじっとしていた。
ぼくは、隙間の前にしゃがんで、猫に呼びかけた。
(つづく)