大木あまり「シリーズ自句自解1 ベスト100」P194

 青き菜に光のうごく二月かな


 一人で吟行するとき、飯田蛇笏の〈おりとりてはらりとおもきすすきかな〉を頭にインプットさせて家を出る。今日こそ、この芒の句のように季語そのものを詠んだ句を作るぞ! 苦手な一句一章を克服すべく、日夜、いや、吟行のときだけでも努力しているのだ。「はらりとおもきすすきかな」、さらりと詠んで芒の本質に肉薄している。どうしたらこう詠めるのだろう。目指せ蛇笏! 目指せ一句一章! そう心に念じながら水菜畑に迷い込んでしまった。光あふれる青き菜に幻惑され、またもやこんな句が……。蛇笏への道は遠い! (『清涼』)