ある日の山口先生

 山口瞳先生がぶらりとみえて、椅子に腰をおろしてすぐに溜息をつきました。
 「嫌われる男の特徴は、はげ、でぶ、ちび、めがね、だそうだけど、気がついたら自分がそうだった。青春をかえせっていいたいね」。
 しばらくしてから、ぼくはふきだしました。
 山口先生を笑ったわけではありません。そのとき店にいた、ぼく以外の人を見ていたら、なんとなくおかしくなったのです。
 社長、店長、次長、有金君。順に、めがね、はげ、でぶ、ちび。
 みんなひとつずつ特徴を備えていて、四人でワンセット。
 やせっぽち、という特徴だったら、あやうくぼくがセットになるところでした。