有金君 その8

 ぼくがあわてて車を購入したのには、じつはわけがあった(註、2004ー10ー17「文藝手帖の中身」参照)。
 古い手帖をみると、5月13日(金)に運転免許の本試験があったことがわかる。当時、川崎市に住んでいたから(旧ヴェルディ川崎のホームグランド、等々力公園のすぐ近く)、横浜の二俣川というところに行って試験を受けた。午後には結果発表があり、免許証を交付されたときには、さすがにうれしかった。
 有金君との自動車外商は、5月30日(月)から6月3日(金)までの五日間だった。たった五日のことだけど、ああでもない、こうでもない、といろいろ覚えているのも、ほんとにどうかしている。
 4日(土)の日はおきまりのオールで、朝から晩まで持ち出した商品の検品(なにか紛失していないか、チェックするわけ)やら売り上げ伝票やら、特注を受けた商品探しやらで長い一日となった。ぎりぎりの人数で営業しているから、二人いないと、その間、だれかが残業していることになり、二人が帰ってきたのだから早帰りさせてもらおう、ということに当然なって、しばらくは残業ばかりになる。
 その翌日の6月5日(日)には、カミさんとぼくの両方の親族が集まって、ごく内輪の会食があった。ぼくたちは、結婚式を挙げなかったから、せめてこれくらいの配慮はするように、だれかにいわれたのかもしれない。結婚式を省略したのは、べつに確固とした意志があったり、信念にもとづいたものではなく、二人とも、ただなんとなく気がすすまなかっただけだ。
 6月13日(月)に展示会の準備(会場に商品を運んで、飾り付けをするのに一日がかり)があり、14(火)から三日間、4階ホールで逸品会を催したことが手帖でわかる。ということは、その一週間前から準備にかかっていて、挨拶回りやら、封筒の宛名書きやらで、みんな大忙しだったということだ。17(金)に後片付けをして、翌日に遅出が入っている。
 古い友人の鰐口と車を見に行った日が、手帖には見当たらない。この手帖が、予定ばかりを書き込んで、実際あったことなんか振り返らないことを物語っている。しかし、ともかく、このあたりで日曜日に車を見に行った。そして、2週間後に引き取りに行ったはずである(別のページに、6月28日車庫証明交付、王子警察とあるから、やはり7月3日(日)あたりかな。つぎの10日の日曜はもうお中元で、休日出勤になっている)。
 カミさんの下の姉(三人姉妹)のご主人が銀行マンで、その銀行が夏の保養所として契約しているホテルが伊豆にもあった。自分たちは帰省するから、かわりに泊まっておいでよ、といってくれた。せっかく、免許を取得したことだし、それなら車で行きたいとおもったのが、そもそものはじまりだった(あー、話が長い)。7月22日(金)23日(土)と代休をとって、24日(日)まで三日間、伊豆東急インへ出かけたことが手帖に残っている(日にちや曜日までこまかく書いて、ほんとに迷惑やで、読まされるものの身にもなってや。ごもっとも)。
 ここで、有金君のおやじさんが登場する。
(またもや、つづく)