ぼくの歯のはなし

 治療してあった歯が2本、並んでとれました。とれたのはかぶせてあった金冠ですが、それをかぶせてあった歯の本体が、驚いたことに影も形もなくなっていました。金冠は、かろうじて歯の根のあたりにしがみついていたのが、とうとうこらえきれずに手を放してしまったようでした。銀座のM歯科(註、2004-11-28「銀座の歯医者さん」参照)で治療してから、まだ3年もたっていませんでした(現在の歯なしで、いや、もとい、話で恐縮ですが、銀座つながりでお許しください)。
 あわてて近所の鈴木歯科医院に予約を入れました。カミさんのかかりつけの歯医者です。そして、世の中にはどうしてこんなに虫歯の人がいるのだろう、としみじみおもいました。月曜から土曜までいっぱいです、と電話の向こうで受付の女性がいったからです。
「それでは、日曜日にお願いします」
 せっかくの休日が歯医者かよ、とおもいながら、ぼくはいいました。ところが、先方に打ち込んだボレーのゆるい球は、難なくカットされ、ポトンと目の前に落ちました。
「日曜は、お休みです」
 それでも、カミさんがかわって交渉してくれて、なんとか土曜の朝一番に診てもらえることになりました。この日は、まとめて検診があるので、治療は受けないことになっていたようです。
 最新式のベッドのような椅子によこたわって、大きく口をあけていると、鈴木先生がのぞき込んで、ふーん、といいました。
「これは、うまくありませんね」
(つづく)