正月休み

ぼくがフジヤ・マツムラに入社したころは、暮は31日の大晦日まで営業して、新年は5日まで正月休みでした。6日は顔合わせですが、もう通常通り営業します。朝礼で社長の挨拶が終ると、ぼくたちペーペーはすぐに挨拶回りに出かけました(註、2005-01-23「五味さんの車で」参照)。
 しかし、新年も6日になると、いささかお正月気分が抜けてしまっていますから、おめでとうございます、といってご挨拶にうかがっても、なんだかシラケた感じがしました。 それで、何年かたってから、正月休暇が変更されることになりました。もちろん、暮のほうも、ただ昔の慣習を踏襲して31日まで営業するのは無駄だという意見が出て、同時に見直されました。歳末セールをしない店に、31日に買い物にみえる顧客がほとんどいなくなったからです。すぐに砂糖部長が掲示を出しました。
「えーと、ですね、部長」と、掲示を見てきたぼくは、砂糖部長にききました。「前は5日間あったお休みが、こんどは1日減ることになるんですね」
「え?」といって、砂糖部長は手帖を見ました。わざわざ手帖を見なくてもわかりそうなものですが、手帖をひろげてみて、「あ、社長にやられた」と叫びました。
 手帖をのぞくと、
「これまでは年末31日まで営業、新年は5日まで休みのところ、年末は30日まで営業、新年は4日から営業と改める」
 と書かれたメモがはさんでありました。社長のメモです。
 砂糖部長は、大きな眼をぎょろりと動かして、つぶやきました。
「ぼくはまた、日にちが1日ずつずれているだけだから、休みの日数はこれまでと同じだとばかり思い込んでた」