指輪 11

 古井豆奴様は、結局、翡翠のほうを選ばれた。ふたつで百万円などと恐ろしいことをおっしゃったが、「そんなん、本気と違いますがな、ホホホ」と笑った。
 リングのサイズが大きすぎたので、指にあわせて直すことになった。東京に帰って、指輪を修理に出して待っていると、豆奴様から電話が入った。
「なあ、タカシマはん、指輪縮めはるのは、どないされるんどす?」
「ゆるい分だけ切って、ちょうどいいサイズにつなぎ直すのだとおもいます」
「やはり、そうされますんやなあ。そうおもいましたんどすけど、やっぱりなあ」
「それがなにか?」
「お母さんとお姉ちゃんがな、いいますのんや。指輪の金の部分、大きい分だけ切り取らはったら、すこし金が減るやんか。その分、すこしまかるのと違いますやろかって」
(つづく)