指輪 12

「あのな、タカシマはん」
 古井豆奴様から電話がきた。
「こないだ、分けてもろた指輪ありますやんか」
「はい」
「あれな、パーティでしてましたんどす」
「ええ」
「あれって、あめ玉半分に割ったような形してますやろ」
「そうですね」
「そんでな、その指輪、かんざしの玉だったんちゃうの、ってある人にいわれたんどす」
「え?」
「わたしな、昔、あんなん翡翠の玉、かんざしで持ってましたんや。いま、あらしませんですけど」
「はい」
「でも、そんないわれ方あらしませんやろ。プライド傷つけられて、癪に障るやおませんか。そんでな、かんざし作ってもらおかおもって。ほんで、その人に、かんざしはこのとおり、ちゃんと持ってますえ、いうて見せてやりたいんどすわ」
「はあ」
「それとな、別の話なんやけど、ルビーの指輪、ほしいおもいますねん。お母さんがな、わたし色白ですさかい、あんたは赤い石のほうがええんとちがうか、いわはりますねん」
「ルビーですか」
「また、質なんかかましませんよってに、タカシマはん、うんと大っきいのん、おたの申します。ただし、こんどは、指輪にしか見えへんルビーにしておくれやす」
(つづく)