綴じ込みページ 猫-9

「わさび様/柚様/鶉様/そろり会の皆様


おはようございます。
せっかくの休日の朝早くからご迷惑さまです。


きのう、お昼前に猫がきました。いや、お届けいただいたわけですが、これがかわいいのなんの。でも、人見知りします。


3時半頃、届けにみえた親娘が帰られたあとも、猫はキャットサークルの棚にうずくまって、上目づかいにこちらの様子をうかがっています(なんだ、すこしも人なつこくないじゃないか)。


昼寝、というか夕寝をして目覚めると、トイレのなかで、しっぽを立てて、大きな目でこちらを見ています。そして、サークルの戸をなめたりして出たそうなそぶりをしました。そのとき、われながらあわてました。いままで使っていたトイレの砂のつもりで、これまで上げていたエサ(カリカリ)のほうをニャンとも清潔トイレにばらまいてしまったことに気づいたからです(だって、そっくりだったんです)。


キャットサークルの戸をそっと開けると、猫はゆっくりした足取りで外に出てきました。そして、しっぽを立てたままぼくの椅子の下に入ってきました。撫でようかどうしようか迷いましたが、まだ早いようにおもえましたので、静かに立ち上がってサークルの柵を上げ(設計ミスだとおもうんですが、簀の子もトレーも、サークル全体(これが大きくて重い)を持ち上げないと取り出せない構造になっていたので、蝶番を取り付けて柵の下段をめくれば開くように細工しておきました)、トイレを取り出し(そう、猫の出入り口からは、トイレを分解しないと出し入れできないのでした)、あわてて猫砂をゴミ袋にあけていたとき、仏壇に飛び上がって、裏側の狭い空間にもぐりこむのが見えました。


そこで、仏壇をいったんとりだして(その間に猫は消えていました)、もう一度奥の壁際まで押しこんでほっとしましたが、こんどはどこにもぐりこんだのか、10畳のダイニングキッチンと6畳の和室といったごく狭小のスペースが、さながらジャングルのようにおもえました。おお、いました。冷蔵庫と壁のごく狭い隙間に、大きな目をこちらにむけてうずくまっていました。呼んでも出てこないので、しつこくしないようにとおもい、昼の残りの玉子のお寿司と巻物で夕食をすませ(昼は出前をとったので)、お風呂に入って出てきても、まだ猫は同じところにいました。ちょっと声をかけて、パソコンに向かいました。次にのぞいたときには、同じところでうつらうつらしていました。12時をまわったので、暖房を切って眠りました(布団のなかに入ってきたらいいなとおもいながら)。


物音で目覚めたのは、夜中の3時頃です。あの、いじけた猫がうそのように、颯爽と室内を歩きまわっていました。どうやら、自分のテリトリーにあるすべてのものに、からだでにおいつけしているようです。そして、同時に、室内をくまなく探索し、念入りに距離と高さを測っているようです。なんども冷蔵庫に飛びのり、食器棚に飛びのり、仏壇に飛びのり、机や本棚に飛びのっていました。においつけは、寝ているぼくのところにもきました。そうして、ぼくが起きていることを知ると、手に顔をすりつけてきました。顔を撫で、頭をなで、口のまわりとのどをなでました。ひっくりかえって、おなかもなでさせてくれました。顔をもみくしゃにしてもいやがりません。室内を歩きまわりながら、ぼくのそばまでくると、きまってあたまを押しつけてきます。布団をまくると、腕のところまで入ってきます。布団をかけようとするとすり抜けていきます。うとうとしながら、それは朝の5時半までつづきました。猫は、完全に夜型になっているようです。


5時半に目覚ましが鳴って、電灯をつけると、猫はあわててカーテンのかげにかくれました。猫の水をとりかえて、えさも用意しましたが、猫は出てきません。6時に簡単な朝食をとってから、顔を洗い、洗濯機をまわして2階に干し、もどってカーテンを開けましたが猫はいませんでした。仏壇と脇の壁とのごく狭い隙間にいました。声をかけても出てきません。


猫グッズの配送先いくつかにメールでお礼状を送って、仏壇猫に声をかけました。あまり鳴き声をあげない猫ですが、困った顔をしていました。開いた仏壇の扉がじゃまで、出てこれなかったようです。狭すぎて、ジャンプもままならなかったのでしょう。扉をどけて、お線香の箱をずらすと、面目なさそうに出てきて、サッと脇を抜けていきました(夜中はあんなに甘えたのに)。


扉と箱をもどして、姿の消えた猫を追いました。案の定、冷蔵庫の隙間にいました。きのうのつづきです。うちにきて、まだ2日目ですが、こうしてぼくと猫との生活がはじまりました。


長くなって恐縮でございます。ですから、「せっかくの休日の朝早くからご迷惑さま」と。敬具
飛行船」