綴じ込みページ 猫-34

イーグルスに「デスペラード」という題の曲があります。「ならず者」と訳されていますが、打ちのめされた、とか、打ちひしがれた、といったほうが歌の内容には合っています。歌詞に「boy」と呼びかける箇所がありますから、年配の男が、年少の男(といっても、中年にさしかかっていますが)のことを気づかって、諭しているのでしょう。いい訳が散見しますが、自分の言葉で訳してみることにします。


デスペラード、なぜ気づこうとしないんだ?
ずいぶん長いこと、フェンスの上に腰掛けているじゃないか。
なんて頑固なんだ、きみは。
それなりの理由があるのはわかるけど、
きみが楽しんでることが、じつはきみを傷つけてるんだぜ。


ダイヤのクイーンは引いちゃダメだ。ボーイ。
そいつはきみをきっと負かすぞ。
いつだってハートのクイーンが一番なのは
知ってるはずじゃないか。


テーブルの上にはいい手が揃っているのに、
ないものねだりをするんだね、きみは。


デスペラード、いまより若くなることはないんだぞ。
からだが痛くなったり、腹が減ったりすると、きみは家に帰ってくる。それと、自由になれるから。
ああ、自由か。そんなものは他人のタワゴトだよ。
囚人じゃないか、きみは。ひとりぼっちの世界を歩く。


冬には足が冷たくないか?
空に雪が舞っているんだか、陽が射しているんだかもわからない。
夜がきたことすらはっきりしない。
どきどきすることも、がっかりすることもない。
感情がなくなるなんて、おかしいじゃないか。


デスペラード、なぜ気づこうとしないんだ?
フェンスから降りて、ゲートを開けろよ。
雨かもしれないけれど、虹だってきみの上にかかるさ。
だれかに愛されるようにしろよ。
手おくれになるまえに。


 手おくれになるまえに、ぼくは一匹の猫を飼ったのでした。