綴じ込みページ 猫-53

 平凡社から「作家の猫」(コロナ・ブックス)という本が出ている。2006年6月25日初版発行。手もとの本は、7月15日発行の初版第二刷である。ひと月で重版されるくらい、猫好きが多いということだろう。
 おもしろいのは、「猫嫌いの作家たち」(草彅洋平)などという、猫好きの気持ちを逆なでするようなコラムが載っていたりするところである。


「吾輩」の三代目が死んだあと書斎を訪ねた野村胡堂が次の猫を飼うのか質問すると、「それなのです。私は、実は、好きじゃあないのです。世間では、よっぽど猫好きのように思っているが、犬のほうが、ずっと、好きです」と答えたとある(「胡堂百話」)。次男である夏目伸六「猫の墓」にも、夫婦揃って猫好きでなかったと書いてある。「吾輩」に名前がないのには理由があったのだ。
(猫と作家をめぐるコラム 2)


 なんとなく漱石先生が遠のいたような気がする。