綴じ込みページ 猫-62

 海賊版「句集 猫百句」のつづき。


 夏  「青猫忌」


   猫の耳は切符の固さ夏に入る
   我が猫に少年期あり柿の花
   青梅を猫がころがし世紀末
   猫怒る寺山修司の忌なりけり
   白く咲く鉄線猫の地獄耳
   ずぶ濡れの猫茴香の花の前       (茴香:ういきょう)
   ひまはりに八つ当たりしてからす猫
   世界に火つけんと猫の尻つぽかな
   猫好きに酒は辛口月見草
   猫の大学あれば入りたし白日傘
   闘へと炎天へ猫出しにけり
   聖堂に猫の鈴の音して凉し
   顔舐めて横浜の猫夏祓         (夏祓:なつばらえ)
   君のいびきいやがる猫と蚊遣豚     (蚊遣豚:かやりぶた)
   青猫忌とはわが忌日夏の雨       (青猫忌:そうびょうき)
   のうぜんに猫のあかるき肛門よ
   猫の辺にしばし弾みて蜥蜴の尾
   奈良盆地猫も歩かぬ暑さかな
   島を出ぬ猫に卯の花腐しかな
   水無月の大き魚拓の下に猫
   猫にうまれて幸せですか花ざぼん
   片蔭は柩の幅や猫歩く
   雷と猫相性悪き鞍馬かな
   猫愛すために生まれし夏帽子