綴じ込みページ 猫-63

 海賊版「句集 猫百句」のつづき。


 秋  「葡萄の闇」


   猫の仮面つけて月夜に契るかな
   猫撫でて水の都の秋深し
   波音にかこまれ猫の眠る秋
   猫走る月のひかりの石畳
   露けさの猫抱き聖女くづれかな
   台風のそれてぴいんと猫の髭
   猫の餌君に持たせて月の町
   猫の傷口月光さへも痛からん
   秋風の猫がよぎるやカフェテラス
   白猫を丸ごと洗ふ虫の闇
     愛猫に
   抱き疲れとはかなかなの畳かな
   泥んこの猫の手洗ふモンロー忌
   猫の鈴つけかへてゐし生身魂      (生身魂:いきみたま)
     愛猫に
   芋の露やさしくなりて死が近し
   猫たちとミルクわけあひ夜業かな
   草の穂や思ひつめたる猫の顔
   背のびして猫満月へ入るごとし
   雲となり君を追ひたし猫じやらし
   猫へ急く十月の野の水たまり
   重くるしき葡萄の闇や猫の声
   口笛の猫誘ひをる穂草かな
   いま君は猫抱きをらん十三夜
   乱暴にあつかふも愛露の猫
   黒猫の爪とぐ月の木なりけり
   朝顔や三ノ輪の猫のこぎれいに
   水あれば猫を映して竹の春
   町なかの猫の駆け込み寺も露