綴じ込みページ 猫-64

 冬/新年  「夢の入口」


   野水仙猫は狩の眼してゐたり
   冬靄の猫の喉より潮騒
   雪が雪追ふ犬ホテル猫ホテル
   極月の猫を走らす長渚
   猫抱いて夢の入口さがす冬
   捨て猫に青く灯れる聖樹かな
   汝は猫科吾は霊長目ヒト科      (汝:な、吾:わ)
   猫にくる葉書一枚石蕗の花      (石蕗:つわ)
   着ぶくれて恋する猫を追ふばかり
   粉雪や夜更ししたる夫と猫      (夫:つま)
   黒猫に縄張りありて厚氷
   仏壇に猫の手が伸び返り花
   眠りては覚めては雪の猫の声
   亡き猫を恋ふ雪の夜のカフェオレ
   猫眠亭と名付けてよりの朴落葉
   雪踏んで光源氏の猫帰る
   にはとりも猫も汚るる十二月
   猫鳴いて枯木日和となりにけり
   大寒の針ともならぬ猫の髭
   水仙の寺や子猫の糞ひとつ      (糞:まり)
   猫を抱き少年うたた寝初めかな


 海賊版「句集 猫百句」は、以上でおしまい。
 自宅を猫眠亭と名付けたなんて、しゃれてていいな。ぼくも、これからは、じぶんちのことを臥猫窟(芥川龍之介臥龍窟のもじり)と呼ぶことにしよう。