綴じ込みページ 猫-68

 Amazonから届いた「新輯内田百間全集」の第32巻は、帯と月報が欠けていたが、箱も本体も、それから中面も、とてもきれいだった。駿河台下の古書店から全巻配送されるのは、週末である。あのコバにしみのある本も、いっしょにやってくる。


 で、その日が来た。ヤマト便のダンボール箱をあけると、本はきちんと4冊ずつ包装されており、(全33巻だから)最後は1冊だけでつつまれた本が出てきた。
 ぼくは、すぐに第32巻をとりだして、ひらいてみた。うーん、やはり汚れている。しかし、待てよ。どうもゴキブリのフンでできたしみじゃないなあ。だいいち、よく見ると黒くない。赤く見える。しかも、ページのなかにまで滲み込んでいる。ゴキブリのフンは、表面しか汚さないから、やはりゴキブリじゃない。これは、なんのしみだろう。
 なんのしみでも、しみはしみ、汚れは汚れである。早速、この第32巻から月報をとりだし、腰まき(帯)をひっぺがして、Amazonで購入した第32巻に移し替えた。これで立派に、月報・帯付きで、まあまあきれいな、文句のない第32巻ができあがった。


 玄関で梱包をといていたのだが、硝子戸越しにミーヤがじっと見ている。なんだなんだ、と興味津々の様子である。猫というのは、好奇心旺盛な動物である。だんだん女房に似てくる気がする。あなた、また、いらないもの買い込んだんじゃないでしょうね、という眼をしている。これは、前から買おうとおもっていた本だよ、と、猫に言い訳しそうになった。
 箱入りの33冊の本というのは、けっこう始末に困る。2階の本棚はすでにいっぱいで、あふれた分は天袋にしまいこんである。いつまでも玄関に積んでもおけないだろうし、といって1階の部屋にはミーヤがいる。さて、どこへ置いたものか。
(つづく)