綴じ込みページ 猫-94

 平凡社刊「作家の猫」の付録ページに「猫の名作文学館」というのが載っている。「猫好きのための、猫好き作家による名作文学館にようこそ。」とキャプションがついている。あいうえお順に作家が並んでおり、猫にまつわる著書を紹介している。


「む」の項で、村上春樹のエッセイ集「うずまき猫のみつけかた」が取り上げられている。この本はもっているので、ちょっとのぞいてみたい気がするが、暑いので二階まで探しにいくのが億劫である。


 村上春樹マサチューセッツ州ケンブリッジに滞在していたときに、猫が飼えない飢餓感から、通信販売で猫のイラスト入りの時計を買った話が出ている。文字盤には、数字のかわりに「食う」「寝る」「遊ぶ」などと書いてあったという。「飼い主」というのが文字盤にあったら、ちょっといいな。


 僕は子供の頃いつも、冬がやってきて日に日に寒くなってくると、世間の猫たちが「ひょっとしてこのまま世界はどんどん寒くなって、氷河期がやってきて、何もかもがかちかちに凍りついてしまうんじゃないか」と不安に感じているのではあるまいかと心配した。


 村上春樹が好きか嫌いかを判断するにはもってこいの文章だ。