綴じ込みページ 猫-101

 物事というのは、いつもそういうふうに進んでいくのかもしれない。迷子札のコインと新しい首輪は、同じ日に届いた。コインには、ちゃんとミーヤと彫られていた。
 早速、ミーヤの首にかけてあげた。渋い紫色は、すこし地味だったけれど、三毛猫の白い首にはよく似合った。


 吉行淳之介「犬が育てた猫」に戻ろう。


 そのあとが、サイレンの真似をする犬と猫になるわけだが、捨て猫が裏口のところにいたので、物置の庇の下に置いてある犬の木箱の中にその仔猫を入れておいた。老犬はそのやさしさのためか、乳母のように仔猫を受入れ、ときどきのぞいてみると、いつも犬の腹にくっついて猫が寝ていた。痩せて肋骨が見えていた仔猫は、肥って大きくなりはじめ、犬と一緒にサイレンの真似をするようになった。
 この雑種の猫はたいそう大きくなり、犬に育てられたため、自分を犬とおもっているのかどうか、立居振舞が犬風で、そのくせ根は猫なのだから、不思議な雰囲気になった・・・。
(つづく)