号外-2

 友だちの甘木の訃報に接した。六年前から絶交していた。


 自分のいいときにしか連絡してこない男だったが、この一、二カ月のあいだに何回か携帯に連絡があって、そのつどぼくは着信拒否していた。六年経って、いい加減ほとぼりが冷めたとでもおもったか、また、景気のいい自慢話がしたくなって電話してきたのだろう、とおもった。


 その日、朝の九時半に携帯が鳴った。見ると、ディスプレイに甘木の名前があった。ぼくは、即座に切った。うるさいな、という気持が強かった。むかしから甘木にはそういうところがあった。自分がご機嫌な声を出してニコニコしてみせれば、だれもが許してくれるというような。だから、ぼくは甘木の声を聞きたくなかった。


 しばらくして、携帯にメールが入った。けたたましい笑い袋の声がそれを知らせた。
「ごぶさたしています。ミドリです。迷惑のようですが、久助がなくなりましたのでご報告だけいたします」


 甘木は病気だったのか、と、そのときおもった。余命一、二カ月と知って、ぼくに連絡をとろうとしていたのか。


 高校に入学して、同じクラスになった。甘木はぼくの前の席だったが、第一印象がわるくて、一学期のあいだ一度も口をきかなかった。それがあることから急速に仲良くなった。だが、まあ、いいや。多くを語るまい。


   逝く友の唇湿せ燗冷まし 飛行船