綴じ込みページ 猫-114

  ミーヤの粉になった骨は、白い麻のハンカチでこしらえた袋に、いくつか小分けにする。そして、その袋を、ぼくの上衣の裏地の内側に縫い付けておく。もちろん、外からわからないようにして。厚手のハリスツイードのジャケットなんかが最適だろう。遺言に、火葬にされるときには、あのジャケットを着せてほしい、と書いておく。ぼくのすべてを遺していくんだから(ま、価値のあるものもないものもあるけれど)、それくらいはきいてもらえるにちがいない。
 火葬場の担当者は、骨を集めたあと、残った粉も骨壺に入れてくれるはずである。間違っても、粉だけ捨てることはないだろう。何回も見ているが、たしか最後に箒で集めて壷に入れていたとおもう。粉の多いホトケだな、とおもうかもしれないが。
 骨壺は、しかるべきのちに、所沢の墓に納められることになる。また、カミサンのそばに行けるとおもうと、いまから愉快である。ぼくが行ったら、カミサンはなんていうだろう。ミーヤがいっしょなんで驚くかもしれない。そして、いうだろう。
「あなたって、ほんとにバカなんだから」