綴じ込みページ 猫-115
また、「作家の猫」(平凡社 コロナ・ブックス)を開いてみよう。
一枚の絵葉書が友人から田村のもとへ届く。追伸に「この猫、田村さん宅の『ネコ』に似ていませんか?」とある。この絵葉書に触発されて田村の詩「カイロの猫」が書かれ、ネコはカイロ生まれということになった。
田村とは、詩人の田村隆一。タイトルは、「田村隆一とネコ」。そして、こんなキャプションがついている。「田村もネコも、正月にふらりとやってきた」。
猫の態度があまりにも大きいので
こいつはエジプトの王室の猫にちがいない
と
ぼくは推定した 礼儀正しく 人が好き
強きをくじき 弱きを助ける
その恋人は
タヌキのようなメス猫で その恋人の素性をたどって行けば
鎌倉 宮大塔ノ宮の大野良猫 その母親は
ひがなベンチに横たわっていて
修学旅行の生徒たちから安いケーキをもらったりして
「人間」という生物が
まったく馬鹿らしくなってきた
(「カイロの猫」 『狐の手袋』)
(つづく)