綴じ込みページ 猫-118

田村隆一とネコ」のつづき。


 野良猫らしからぬ、堂々とした態度に、最初は飼い猫が迷いこんできたかと思った夫人が「あんた、帰んなさいよ」と猫に諭したが、一向にどこへも行く様子がない。田村の「飼ってやれよ」の一言で、この野良の雄猫は田村家で飼われることとなり、彼の命名により「ネコ」と呼ばれることになった。


 この章の扉の写真に、田村とネコが写っている。家の裏に置かれた濡れ縁に、散歩から戻ったらしい田村と、のんびり寝そべっているネコがいる。ネコは、白黒のブチで、頭と尻尾が黒、それから背中に三つ、黒のブチが島をつくっている。頭の黒い部分は、左の目だけ覆っている。


 田村はネコの黒いブチの模様を「片方から見るとチャップリンで、もう片方から見るとお岩さんだ」と言っていた。


 本文にそう書かれているが、なるほど左側はチャップリンに似ているようである。鼻が黒いのが、チョビひげに見える。扉の写真にキャプションがついている。


 田村隆一とネコ、自宅の庭にて。庭には悦子夫人が500円で買った苗木から育てた桜の木がある。田村はこの桜を「五百桜(いおざくら)」と呼んだ。


(つづく)