綴じ込みページ 猫-119

田村隆一とネコ」をもうすこし見てみよう。


 夫人は「田村もネコも正月に家にやってきたし、どちらも来た時から悪びれることなく、堂々としていて、よく似ていたと思うわ」と笑う。態度だけではなく、食べ物の好みも似たところがあった、という。


 失礼だが、「作家の猫」(平凡社コロナブックス)を担当された編集者の方の文章は、引き写しているとくたびれる。吉行淳之介の文章を引用するときのように、写していて気持のよさが感じられない。だから、ぼくの読書範囲はせばまってしまうのだ。詩でも俳句でもそうだが、ちょっと引用するときに、書き写しているあいだ、快感を感じられない文章というのは、どんな内容であっても、ぼくには縁のない文章である(とはいうものの、勝手に借用しているのはぼくのほうで、本当に相済みません)。


 扉の田村とネコの写真のとなりのページに、絵はがきの写真が載っている。絵はがきの裏はカイロらしい街角の写真で、無人の赤い自動車が駐っており、そのこちら側に白黒ブチのネコがすわっている。地面は赤い砂色である。「エジプトのカイロから友人が、田村の猫に似ているとこの絵葉書を送ってきて以来、田村家のネコはカイロ生まれということになった。」とキャプションがついている。
(つづく)