綴じ込みページ 猫-120

田村隆一とネコ」のつづき。


 絵はがきには、細かい文字で、こう書かれている。


 TV、拝見しました。行く先々で、それは楽しそうに お酒を召上がっていらっしゃいましたね。たいへん お元気なごようすで、なによりでした。でも、もう、2〜3人は、奥サンをもらうなんて、ウマイことは、ないと思います。そろそろ、涼しくなってくるそうですから、夏のお疲れがドッと出たりなさらないよう、お気をつけてお過ごしください。9/5
 P.S. この猫、田村さん宅の「ネコ」に似ていませんか?


 このテレビというのは、ぼくも見たテレビ番組のことだろうか。
 田村さんが、散歩中に骨折したあとで、もうお元気そうだったが、ベッドで朝食を摂られるとき、夫人がワインをグラスに七分目くらい注いだのを見て、「それはずるいよ。もっと口まで注がなくちゃあ。契約違反だ」とおっしゃった。夫人が、やれやれ、といった風情でたっぷり注ぎ足すと、田村さんはうれしそうに受取って、口をつけた。
 田村さんは、鎌倉の細い路地をぬって歩きながら、いろんな話をされた。このときのテレビは、ビデオに録ってあるが、昔のテープのやつなので、いまはもう見られない。
(つづく)