綴じ込みページ 猫-123

長靴をはいた猫」のお話をご存じだろうか。ぼくは、靴の話をしようとおもって、はじめて調べてみた。調べてあらすじがわかっただけで、ちゃんと読んだわけではない。関係ないが、うちのミーヤの爪が伸びて、ねえ、といって突然膝に前足を置かれると、ときとして飛びあがるほど痛い。ミーヤにはかせる長靴はないものか。


 最近、仕事ではく靴の劣化が烈しくなって、もう一生革靴は買わないつもりでいたが、そうもいかなくなった。そこで、イギリスのカントリーシューズを何足か購入したことのあるインターネットのショップで、こんどは同じメーカーのビジネスシューズを注文してみた。ところが、あろうことか、これが大失敗で、はいてみたらゆるゆるだったのである。原因は、自分の足のサイズを思い違いしていたことにあった。


 きちんと計り直して、これが生涯で最後の靴になるかとおもったから、ファッション評論家の故・落合正勝氏の教えに従うことにした。いわく、一足十万円以下の靴は買うな。
 そうはいっても、懐具合は簡単に教えに従えない。どうしたものか。そういうときには、オークションがあるじゃないか。
 で、すぐに一足、落札した。非常にリーズナブルだった。じつは、これは、靴のサイズと木型がぼくに合うかどうかを試す賭けで、失敗したら大散財をこうむるところだった。
 

 木型によって、足の幅(親指と小指の付け根をぐるりとひとまわりした寸法)と甲の高さ、それに靴の長さが変ってくる。ラストと呼ばれているが、幅がD、E、Fと分かれるだけではなく、スタイルもラストによって違ってくる。たとえば、あるメーカーのE202というのはつま先が卵のように丸く、E606になるとスクエアの形になってやや先も長めになる。
 

 足の幅を計る部分は、ちょうど足の先が折れ曲がる部分でもあり、ボールジョイントと呼ばれる。ここがきつくもなく、ゆるくもないのが最良のサイズで、きつい場合は、噛み付かれる、という言い方をする。ぼくはさいわいなことに噛まれなかった。噛まれていたら、ミーヤの爪がずっと刺さっているような痛みに、最低三カ月は我慢しなくてはならなくなっただろう。
(つづく)