綴じ込みページ 猫-133

 日曜ごとに日本橋に行く。車がないので、靴をいっぺんに運べないからである。靴というのは、あんがい重いものである。それに、履いているとわからないが、これが持って歩くとなるとけっこうかさばる。ジョッパーを履いて歩いているが、そういえばブーツを持ってきたときには、かさばるし重いしで、ずいぶん往生した。


 くだんの修理屋さんで、エドワードグリーンの黒の靴のつま先に、ヴィンテージスチールという金具を取り付けてもらう。二足で約六千円也。新しいうちは、裏底の革の返りがわるいから、つま先の裏側の部分の減りが激しい。そのため、予防につま先に金具を取り付けておくのである。ラバーのほうが安いが(一足千二百円くらい)、スチールと違って厚みがあるので、取り付け部分の革を削らなくてはならず、底を縫っている糸がほつれやすくなるそうだ。ほつれたりしたら厄介だから、金具のほうを奮発する。


 ブーツはいつごろまで履けるのか、足もとを指さして、お店の女性にたずねてみた。
「そうですね、三月いっぱいくらいでしょうか。せっかくですから、季節に合ったお靴をいろいろ楽しまれたほうがよろしいですよ。また、来年のお楽しみにして」
 なるほど。ぼくは、季節の終わり近くになって手に入れたものだから、意地汚く、なるべく長く履くことばかり考えていた。
「もう、そんなに春秋に富んでいるわけでもないんですよ」
 と、いいかけて、口をつぐんだ。