綴じ込みページ 猫-135

 四月一日は、エイプリルフール。
 文春文庫の山本健吉篇「最新俳句歳時記(春)」には、「四月一日をエープリル=フールズ=デー、またはオール=フールズ=デーと言って、ひとをかついだり驚かしたりすることが許される風習が西洋にある。エープリル=フール・四月馬鹿・万愚節。」とある。
 最新と銘打っているが、この歳時記は1977年2月25日第一刷だから、三十七年間、ずっと最新のままである。例句が古くて役に立たないでしょう、といわれることもあるけれど、ぼくは好きなものはずっと好きなタチで、いろいろとすぐれた歳時記が発行されているのかもしれないが、すこしも不自由を感じない。


 ミーヤは、四月二日生れのメスの三毛猫である。今年八歳になる。七歳から高齢期ということなので、食餌も去年から高齢猫用に切り替えた。
 四歳でうちにきて、すぐに東日本大震災があって、五歳になった。その後の三年なんてあっという間だった。妻がなくなって四年経ったのも、だから、あっという間のことである。で、ときどき、ミーヤは妻がよこしたのではあるまいか、と、ふっとそんなふうにおもえることがある。


「最新俳句歳時記(春)」から、四月馬鹿を詠んだ句を紹介してみようかな。


   四月馬鹿ものおもふことにつみありや 万太郎
   おしろいのはげし女給の四月馬鹿 草城
   銅像の片手の巻物万愚節 草田男
   指切つて血がとまらぬよ四月馬鹿 桂郎
   万愚節恋うちあけしあはれさよ 敦
   飼ひ猫の妻に似てくる四月馬鹿 飛行船


 なんとなくへんだな、とおもわれたら、それは四月馬鹿のせいでしょう。