綴じ込みページ 猫-150

 ミーヤの首輪がよれよれになったので、買い替えることにした。こんどは、麻の首輪にした。


 俳句に「白服」という夏の季題がある。山本健吉編「最新俳句歳時記(夏)」(文春文庫)には、「真夏は、麻・セル地などの白服を着ることが多い。白装。」とある。


 先日の句会でぼくが詠んだ句には、季語が三つ入っていて、目ざといいて丁さんが、わざとか、確信犯か、と隣から小声でいった。確信犯というほどの考えはなくて、ただ三つ揃ってしまっただけである。素堂という俳人に有名な句があって、知らない人はいないだろうが、次のようなものだ。


    目には青葉山ほととぎすはつ鰹 素堂


 この句にも、季語が三つある。しかも、よくいわれるように、一句のなかに視覚と聴覚と味覚が盛り込まれている。青葉の景色を眺めつつ、ほととぎすの鳴く音を聴きながら、初鰹に舌鼓を打っているのだから。


 ぼくは、あまり先生の評を、固唾をのんで待った。以前、これと同じことをして、こてんぱんに叱られたことがあった。


    白服は麻こそよけれ桜桃忌 飛行船


 しかし、あまり先生は、評をしたあとで、「桜桃忌」を季語とすればいいでしょう、とおっしゃった。桜桃忌は、六月十三日、太宰治のなくなった日である。ほかの二つには目をつむる、とはおっしゃらなかったが。


 で、句会には出さなかったが(いて丁さんに、また猫か、といわれそうだから)、ミーヤの首輪の句も詠んでいた。


    夏来る猫の首輪も白麻に 飛


 これにも二つ、季語がある。