綴じ込みページ 猫-153

 句会のお仲間のいて丁さんが、はじめての句集を上梓された。もっとも、ご本人には第一句集というお考えはないようだ。俳人としての世界が広がって、名刺代わりの句集が必要になったから、とおっしゃった。浅葱色というのだろうか、黄緑色の表紙のきれいな冊子である。


 大きさが、ちょうどCDのケースと同じ寸法で、とてもしゃれている。一ページに三句ずつ並んでいて、全部で一五〇句収めたそうである。題名は、「白石正人句集 『わかめご飯の素』2009〜2014」。木山捷平の本にありそうな題名で、なんだかやつしている感なきにしもあらずだけれど、ま、渋くてよい。制作費をうかがったら、ぼくの小遣いでもなんとかなりそうな按配で、ぼくの句集はこれでもいいや、とおもった。


 せっかくだから、中身も拾っておこう。


「春 Spring」
    ふらここや背押し係を願ひでる
    愛の日の君には千の雛菊を
    切抜けば小さくなりぬ紙雛
    猫目草遊び心はいづくにも
    目薬を差して北窓開きけり
    赤べこに墨の目ふたつ山笑ふ
    鳥帰るドラムロールよ永遠に
    春一番メトロポリタン・シンフォニー
    鷹鳩と化し炊出しの列に入る
    ありふれた景色ばかりや亀の鳴く
    亀鳴くや父の齢を超えたる日
    啓蟄の抓めば出づるティッシュかな
 
(つづく)