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 白石正人句集「わかめご飯の素」(「春 spring」)を読んでわかることは、いて丁さんとぼくの感性が違っていることだ。しかし、まるっきり違っているわけでもなくて、かえって始末に困る、とおもった。


「夏 summer」
    パセリパセリ刻んで刻んで五月来る
    挨拶のハグは短く花海芋
    アイリスや傾げて曲がるオートバイ
    年金の振込まれし日苺買ふ
    夜濯やパンツ靴下吊ズボン
    嘱託の身分と云へど更衣
    佳き人は夢で逢ふひと明易し
    明易やコンビニまでの女下駄
    居酒屋の背中合わせの団扇かな
    地下鉄はレモンイエロー夏祭
    みこし胝匿せぬほどや初松魚
    文化鍋文化包丁瓜冷す 
    夏帽子牧人のごと吟行す
    夏蝶のぎらりアインシュタイン
    捩花や右から開く對數表


(つづく)