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白石正人句集「わかめご飯の素」(「夏 summer」)のつづき。 


    杜鵑鳴いて樹雨の落ちにけり
    サムシング・グレート万緑に在り
    海岸通りバーガー店の金魚草
    夏の月大胆なことやりさうな
    今日からはただの友達ビール注ぐ
    臍凉し表彰台のアスリート
    河鹿鳴く私は何も望まない
    兜虫歩む濃度を確かめつ
    蟻もまた一本橋を渡りけり
    早足の喪服の二人濃紫陽花
    急坂のはじめ泰山木の花
    三伏の下れば上る蛙坂
    藻の花やめだか居るかと尋ねられ
    鹿よけの柵かなしめや青田道
    竹皮を脱いで素直になれぬ日も
    炎天やバナナ落としてなるものか
    まじまじと見られ見かへす日焼かな
    風死なば我も死すべし蝉時雨
    隧道の果ての白さや鴨足草
    蒲小蒲姫蒲身丈超えゆけり
    青柿の落ちてありけり雨曇
    少年の水鉄砲の的決まる


(つづく)